I love you に代わる言葉



 最寄り駅で電車に乗り、知らされていた通り二十分揺られる。下車しそれから待つ事数分、××県へ向かうバスがやってきた。家を出てから駅に向かうまでの時間、電車内、そしてこの待ち時間、おねーさんはいつもみたいに話し掛けてくれた。目的地が目的地なだけに、何となく声を掛け辛いと思っていたけど、どうやら神経質になり過ぎていただけのようだ。だけど、何も考えていない筈は無いんだ。なのにいつも通りに振る舞うおねーさんは、やっぱり強くて優しいとボクは思った。
 バスに揺られ、ボクは窓外の景色を眺めていた(窓際の席をおねーさんは譲ってくれた)。こんな所まで外出しなかったボクにとって、バスセンターから先はボクの知らない景色であり、また、未知の世界とも言えた。
 景色は進み少し田舎道に入った時、ふと、赤い彼岸花が咲いているのが目に留まる。それは、秋だなと感じさせると共に、今が丁度秋の彼岸である事を思い出させた。そして今日は彼岸の明け……だ。『暑さ寒さも彼岸まで』という言葉が不意に脳内に浮かんで、ボクはハッとする。そしてそっと目を伏せた。
 ――……ケンヤという男は何処までも……おねーさんを守り、救う事に執着したんだろう。
 ボクは体勢を変えるフリをして隣に座るおねーさんを横目で盗み見る。おねーさんはそこに座しているだけで、その胸中にどんな想いを巡らせているのか、その横顔からでは到底解り得るものではなかった。