驚くボクを見て微かに苦笑を漏らしたシンだが、つと視線を逸らすと、静かに言った。――呑気に、眠れる訳がねぇ、と。
 その言葉一つに、全てを汲み取るには些か困難なあらゆる感情が見え隠れしているようで、ボクには掛ける言葉がなかった。静かにゆっくりと壁に寄り掛かりながら、憂鬱と爽快の狭間で朝を待つ自分の胸元を、軽く掴んだ。
 夕方、ボクはおねーさんと墓参りに行く。隣の××県まで行くらしいから、ボクは学校を休まなければならない。昼まで授業受けて早退しても間に合わなくはないけど、面倒だから一日サボる気でいる。バイトは予め休みを貰っているから問題ない。××県までバスで片道二時間で行けるらしい。墓参りが終わればすぐに帰宅だ。
 実家に行くにはそれより更に二十分程バスに揺られる必要があるらしく、帰省はまたの機会にすると言っていた。ケンヤとは一年半程の付き合いだから、相手の親族に顔を見せる必要もない、余計な心配を掛けるだけだから、とも。