「ははっ、全然解らないんだけど」
 そう言うと、おねーさんはごめんなさい、と小さく謝罪した。そして、
「でも、必ず言いますから……! 今は、忘れてください」
「わかった。『今度』の日を楽しみにしてるよ。――じゃ、ボクは部屋に戻るから」
 そう言って背中を向けるボクに、あの……! と言っておねーさんは呼び止める。振り返れば、おねーさんはボクのあげた置物をそっと掴んで抱えた。
「これ、本当にありがとうございます。すごく嬉しかったです……!」
 そうやっておねーさんは、感動と礼を何度もボクに伝えてきた。
「そう……よかった」
 先程言えなかった台詞を、此処でボクは言う。今度こそ部屋に戻ろうと背中を向ければ、おやすみなさい、と呟いた声が、背中に温かく届けられた。