I love you に代わる言葉

「……どうしたんですか?」
 扉の傍から一歩も動かず無言でいるボクが、いつもの調子でないと感じたのか、少々不安げな眼差しでボクを見てくる。ダメだ……侘びの印とはいえ、好きなヒトに何かを贈るというのは、こんなにも緊張するものなのか……。けど、これ以上黙し続ければおねーさんの顔が怪訝なものへと変化する。
「……日生くん? だ、大丈夫ですか……?」
 顔を覗き込まれて、自分が相手に相当不安を与える顔をしているのだと気付いた。
 これ以上不安にさせるのはマズイ。下手したら不審者だ。ボクはバッと紙袋をおねーさんの前に突き出した。これ……、という言葉とムスッとした可愛げのない表情と共に。おねーさんの顔を見る余裕はなかった。
「? これは……?」
 おねーさんは静かに問うてくるが、ボクは視線を逸らして黙り込んでいた。
「え、……っと、私に……ですか?」
 自身なさげにおねーさんはボクに尋ねてくる。当然の反応だ、と何処か冷静に思考する。ボクは小さな声で、そう、とだけ告げた。するとおねーさんは、何も言わずそっと紙袋を受け取ってくれた。おねーさんの手に渡ったそれにチラチラと視線を送りながら、ボクは説明する。
「オルゴール、……割っちゃったからさ……それ……まぁ、その……うん」
 説明と呼ぶには些か疑問の残る言葉達。だけど、ボクにはそれが精一杯だった。おねーさんの顔をやっぱり見られなくて顔を背けていたら、嬉しいです、と小さく呟く声が耳に届いた。ゆっくりと顔を上げておねーさんを見れば、とても幸福そうな微笑を湛えていた。