I love you に代わる言葉

 けど、本当にうまくいった場合、不思議な感覚なんだろう。高校生で付き合うなんて当たり前の話だが、ボクには無縁過ぎて、カノジョがいるってどういう感覚なのかよく解らない。そもそも友達なんていなかったから、そういう話をした事もない。浮かれて騒ぐ馬鹿や下卑たヤツは周囲にゴロゴロいて、そういう奴等が発する品性の欠片のない会話が聞こえてくる事もあるけど、興味はなかった。低レベルの人間だと勝手に判断して何処か見下してさえいた。今もまぁ、そういう奴等は低レベルだと思っている。けど、真面目に恋して真面目に付き合う奴も何人かいたのかも知れないな。
 ウラヤマシイ、と思う。好きなヒトが、カノジョになるって。それってつまり、おねーさんがカノジョになるって事だろ。ボクがカレシとして……隣にいるって事だろ。心底、両想いだったかも知れない今井を羨望した。するとボクは、結局変化が欲しいんだ。
 おねーさんをちらと見ると、視線に気付かれ目が合う。そしてやっぱり、おねーさんは微笑む。
 好きだ って。
 伝えたくなる。
 けど、ダメだ。
 伝える日は決めてある。伝える言葉も、それじゃない。それに、例の置物すらまだ渡していない。
「……あ。」
 しまった。ボクはまたも間抜けな声を出し、足を止める。深い沈思の末に、こんな間抜けな声を出すとは。紙袋、今井に持たせたままだ。それを思い出した。
「今度はどうしたんですか?」
 おねーさんはボクの半歩前で立ち止まり、ふふっと笑いながら問い掛けてくるが、何でもない、とボクは言って、再び歩き出す。そんなボクにおねーさんは深く追求する事なく、隣を歩いていた。