呼ばれたのはボクじゃないのに、何故かボクも今井と同時に振り返る。すると三メートル程先に、先刻化粧室の前でこちらを見ていた例の女が立っていた。外見からは想像も出来ない程顔は強張り、酷く緊張しているように見えた。声は高めで、いかにも女って感じの声だった。今は一人のようで、一緒にいた友人の姿は辺りにない。
今し方ハッキリと「今井」と呼んだこの女は、やっぱり今井の知り合いだったのか。瞳は揺れながらも、真っ直ぐに今井を捉えている。今井の様子を見てみると、状況が飲み込めないのか女が何処の誰か解らないのか、或いは知っているのか、とにかく驚いていてまぁよく解らない表情だった。真っ直ぐ射抜かれて、戸惑う様子すら窺える。
今井は言葉が出ない様子で、呆然とも、唖然とも、愕然ともしていて、若干意味の異なる三つの言葉全てを、その顔に湛えていた。女は、不安そうにしながらもこちらに少し歩み寄ると、
「……あの……、今井くんだよね……?」
と、俯きがちにもう一度、おずおずといった様子で今井に声を掛けた。今井はそこでハッと我に返ったらしい。「あ、あぁ……」と小さく返事をし、女をまじまじと見た後、
「……上原か?」
と言った。今井が名前を呼んだ直後、女はハッとした表情を見せた。ほんの僅か喜びが顔面を掠めたのは、女が「上原」で合っている事の表れだろう。何処かで聞いた事あるようなないような名前だ。二人の様子をまじまじと観察していれば、不意に、
「日生くん」
と、おねーさんに小声で呼ばれた。振り返ったボクにおねーさんは、少し離れた場所に行きましょう、と囁くように言った。ボクは訳が解らなかったが、もう一度二人を見やった後、取り敢えずおねーさんの後について行った。
今し方ハッキリと「今井」と呼んだこの女は、やっぱり今井の知り合いだったのか。瞳は揺れながらも、真っ直ぐに今井を捉えている。今井の様子を見てみると、状況が飲み込めないのか女が何処の誰か解らないのか、或いは知っているのか、とにかく驚いていてまぁよく解らない表情だった。真っ直ぐ射抜かれて、戸惑う様子すら窺える。
今井は言葉が出ない様子で、呆然とも、唖然とも、愕然ともしていて、若干意味の異なる三つの言葉全てを、その顔に湛えていた。女は、不安そうにしながらもこちらに少し歩み寄ると、
「……あの……、今井くんだよね……?」
と、俯きがちにもう一度、おずおずといった様子で今井に声を掛けた。今井はそこでハッと我に返ったらしい。「あ、あぁ……」と小さく返事をし、女をまじまじと見た後、
「……上原か?」
と言った。今井が名前を呼んだ直後、女はハッとした表情を見せた。ほんの僅か喜びが顔面を掠めたのは、女が「上原」で合っている事の表れだろう。何処かで聞いた事あるようなないような名前だ。二人の様子をまじまじと観察していれば、不意に、
「日生くん」
と、おねーさんに小声で呼ばれた。振り返ったボクにおねーさんは、少し離れた場所に行きましょう、と囁くように言った。ボクは訳が解らなかったが、もう一度二人を見やった後、取り敢えずおねーさんの後について行った。

