I love you に代わる言葉



 フードコートで今井は、ハンバーガーセットを注文し、それにかじりついていた。右手にハンバーガー、左手にポテト、それらを交互に口に入れ、ハンバーガーなんかは大口を開けてかじる。がっつく姿がみっともなくて他人のフリを(一応)試みたが、同じテーブルに座した限り不可能だと即座に悟り諦める事にした。掛けた椅子はアームチェアで、ボクはそれに凭れ掛かり、肘をついたやや偉そうな姿勢で、今井の食べる姿や周囲の人間を観察していた。
 そこで、ふと。
 今井の肩越しに、一人の女が見えた。そこそこに距離があるが、こちらの様子を探るように、微動だにせずじっと見つめてきているのは解る。女はフードコート近くの化粧室の前で、誰かを待っているみたいに見えた。服装は私服だ。外見のみのイメージで言えば、とても淑やかな女には見えないが、立ち姿や雰囲気は、そんなにキャピキャピとしたものではない。派手派手しく清潔感の欠片もないようなギャルでもないが、地味な部類でもない。ちょっとしたギャル、と言えば一番しっくりくる。同年代くらいに見えるが、ボクはその女を知らない。
 女の視線がここより先に向けられたものかも知れないと思って背後を確認してみるが、特に知り合いらしき人物も見当たらないし、誰も女に視線を送る様子はなかった。もう一度その女を見ると、やはりこちらをじっと見ている。
「どうしたんだ?」
 不自然なボクの動きが気になったのか、今井が尋ねてくる。
「何だ? 知り合いでもいたのか?」
 今井はそう言ってボクの視線を辿り背後の様子を観察する。すると女の表情がハッとしたようにボクには見えた。今井の目が何処を見ているのかボクには解らないが、とにかくこいつの目に留まるものはなかったらしい。すぐにこちらに向き直った。