I love you に代わる言葉

「――ところで今日はどうしたんだい?」
 オバサンはくるりと方向転換し、ボクの方に向き直る。
「ああ、ちょっと用があって」
 そう言ってボクはおねーさんを見る。するとおねーさんは、私にですか? と尋ねてきた。ボクは頷くと、オバサンから少し距離を取った。その動作が意味する事を瞬時に察したおねーさんは、ボクの後をついてくる。ボク等の会話がオバサンに聞こえないようにとの計らいだったが、その必要はなかったようだ。オバサンはボク等に目もくれず、今井に茶々を入れていた。それに安堵すると、ボクはおねーさんに向き直る。
「今日さ、今井ん家に行く予定だったけど、やっぱりそっちに帰っていい?」
 問うと、おねーさんは、あぁ、と呟き、笑った。
「そんな事ですか。もちろんですよ。今は日生くんの家でもあるんですから」
 ボクの家……そう言われて、心がぽかぽかと温かくなった。そんな風に言って貰える事が、たまらなく嬉しかった。
「……で、さ。今井も来たいって言うんだけど」
「私はいいですよ。真も多分いいって言うと思いますよ。真は誰か居ても居なくても、生活スタイル変わりませんから」
 おねーさんはそう言ってふふっと笑った。確かにシンは、しっかりはしているが何処かマイペースだ。気遣いは忘れないが、いい意味で相手を放置して己の好きな事をする。取り敢えずしたい時にし、したくない時には何もしない、という奴だ。人の顔色を一切窺わず、媚び諂う事もない、極端にさっぱりした奴だと、一緒に暮らして知った。周囲に流されない人柄である事が、雰囲気に既に醸し出されてはいるけど。
「なら、まぁ、そういう事だから」
 ボクはおねーさんにそう言うと、未だオバサンに絡まれている今井の元へ行こうとした。が、
「日生くん……!」
 と、ボクの腕でも掴むんじゃないかと思う程の慌てた口調で、おねーさんに呼び止められた。