「日生くん」
不意に呼ばれ、バッと顔を上げた。おねーさんは、とても優しい眼差しでボクを見ていて、苦しんでいるのは寧ろ自分のように思えた。
「今、何を考えていますか?」
とても優しい口調で問われ、動揺する。ボクは、何も答えられなかった。
「もし……もし、オルゴールの事を考えているなら、それはもう、忘れてください。こんな事を聞いた後では、とても無理なお話でしょうが。一昨日も言いましたが、私は寧ろこれで良かったと思っています。あれは確かに彼との思い出そのものだったけれど、前に進む為には必要な事だったのだと思うんです。だから、」
おねーさんはそこで言葉を一旦止める。やや伏せられた決意と情熱の込められた目元と、それでも自分は幸福であると言わんばかりの微笑が、あまりに綺麗で、思わず自責の念など忘れて暫し見惚れた。
おねーさんは顔を上げると、ボクを、真っ直ぐに見つめてきた。
「日生くん、割ってくれてありがとう。割ってくれたのが日生くんで――、」
よかった。
邪の無い、透き通った瞳で真っ直ぐに告げられる。動揺と困惑でボクは冷静さを失いそうになる。
ボクでよかった……? それはよかった、と言うのも違うだろう。どういう意味なんだ。巡る想いにただただ困惑し、目を見張るようにおねーさんを見ていると、おねーさんは突然にこりと笑った。
「私、もう一度前に進みます」
あの日のようにとてもスッキリとした表情で告げられ、ボクはただ、おねーさんをじっと眺めていた。
不意に呼ばれ、バッと顔を上げた。おねーさんは、とても優しい眼差しでボクを見ていて、苦しんでいるのは寧ろ自分のように思えた。
「今、何を考えていますか?」
とても優しい口調で問われ、動揺する。ボクは、何も答えられなかった。
「もし……もし、オルゴールの事を考えているなら、それはもう、忘れてください。こんな事を聞いた後では、とても無理なお話でしょうが。一昨日も言いましたが、私は寧ろこれで良かったと思っています。あれは確かに彼との思い出そのものだったけれど、前に進む為には必要な事だったのだと思うんです。だから、」
おねーさんはそこで言葉を一旦止める。やや伏せられた決意と情熱の込められた目元と、それでも自分は幸福であると言わんばかりの微笑が、あまりに綺麗で、思わず自責の念など忘れて暫し見惚れた。
おねーさんは顔を上げると、ボクを、真っ直ぐに見つめてきた。
「日生くん、割ってくれてありがとう。割ってくれたのが日生くんで――、」
よかった。
邪の無い、透き通った瞳で真っ直ぐに告げられる。動揺と困惑でボクは冷静さを失いそうになる。
ボクでよかった……? それはよかった、と言うのも違うだろう。どういう意味なんだ。巡る想いにただただ困惑し、目を見張るようにおねーさんを見ていると、おねーさんは突然にこりと笑った。
「私、もう一度前に進みます」
あの日のようにとてもスッキリとした表情で告げられ、ボクはただ、おねーさんをじっと眺めていた。

