I love you に代わる言葉

「で、さ。聞きたい事っていうのは――」
「けんやの事ですね……?」
 おねーさんに先に言われ、ボクは少し驚いた。やっぱり、解っていたんだ。ボクは床へと視線を変えた。
「うん……その人、おねーさんが付き合ってた男だろ。……シンから聞いた」
 ボクは自分でも驚くくらい、とてもしっかりとした口調で話している。おねーさんはまた、少し寂しそうな顔をした。
「真、他に何か言ってました?」
「元彼、としか言わなかった」
「……そうですか」
「あの時何でボクを見て、ケンヤって言ったの?」
 直球にそんな質問を投げ掛けると、おねーさんの双眸が揺らいだ。そしてそっと、哀しそうに目を伏せた。一見すると下方を見つめているだけなのに、ボクには、現在から遠く離れた時代へ、視線が泳いでいるみたいに見えた。
 おねーさんは、ゆっくり、言葉を紡いだ。
「……日生くんが同じ言葉を……言ったから……」
「ケンヤって人と?」
「……はい」
 おねーさんは今にも泣き出しそうな顔で、小さく返事をした。やがて落ち着いた様子で、ぽつり、ぽつり、語り出した。