「私は、この石が一番光を感じるんです。地味だから最初は見向きされない石なのですが……宝石としての価値も乏しかったみたいですし。だけど、幾重にも重なった層、不純物を含み暗くなってしまった色彩。そこに寂しい歴史と重みを感じるんです。それが放つ光ですよ? とても美しい姿じゃないですか」
 目が無くなるくらい細めて笑う。
「まぁ、歴史と重みなら全ての鉱物に当て嵌まってしまうのですが、」
 そう言って苦笑した後、言葉を続けた。
「だけど何だか、ラブラドライトって暗闇の中にある光みたいじゃないですか?」
 その言葉にボクは目を見開いた。
 正直、理解なんて出来なかった。ボクには、汚いものが愚かにも光を放ってその存在を何とか知らせているみたいで。これが石ではなく人間ならば、哀れに思うだけだ。汚く淀んだ色彩に似合わない光。輝かしい石が並ぶ中でそれはそぐわないし、黒色の石よりも価値を見出せない。黒色の方がまだ光って見えるさ。
 そこにあるだけ。塊がそこにあって無駄に場所を取る。どれだけ考えても、おねーさんの言葉を聞いても、ボクには解らない。
 やっぱりボクは、この石が嫌いだ。
 だけど、おねーさんが好きだと言ったこの石が、何だか気になる気もした。