I love you に代わる言葉

 それから幾秒かの沈黙が訪れたが、不意にシンはくくっと笑い出した。不可解さと不気味さに眉が寄る。ジッと穴があく程にシンを見ていると、笑みが作られた口元が、ゆっくりと開かれた。
「そうだな。そんな事聞くまでもねぇか。悪い、野暮だった。――あんな親を本当は好きだなんて思う筈がねぇよな」
 シンの言葉に、ボクは黙って耳を傾けた。
「子供を捨てる事が平気で出来るんだ。そういうヤツ等は、クズだ。その辺に落ちてるゴミと変わらねぇ。寧ろゴミの方が価値があるかもな。何処かの国じゃあ、残飯だって誰かの食い扶持に繋がる事もあるんだからな。――日生の「死んで欲しい」と思う気持ちも解る。死ななきゃ直らねぇクズが、世界にはごまんといる。いっそ死ん――、」
「黙りなよ」
 ボクは底知れぬ憤慨を覚えながら、ただシンを睨み上げた。ペラペラと非難の言葉を並べていく目の前のこいつに、何故か怒りが込み上げてきた。
「その話はするなってさっき言っただろ。聞こえなかったのか? それ以上言ってみろ。この手でアンタを黙らせる事も出来るんだ」
 ボクの怒気をその肌で感じているだろうに、それでもシンは余裕の笑みを崩さなかった。シンのそれは、ボクの怒りを煽る。
「何怒ってんだ? 日生。俺は間違った事は言っちゃいねぇよ」
「――黙れって言ってるだろ!!」
 ボクはテーブルにあった雑誌を勢いよく掴み、言葉と同時にそれをシンに投げ付けた。己に向かってくる雑誌を、咄嗟に左腕でガードするシン。ボクは己の憤懣をシンに思い切りぶつけた。ボクの怒鳴り声が家中に響き渡る。