I love you に代わる言葉


「――そんでよ~、今日はホント母さんにムカついたぜ」


 今井が何気無く零した愚痴に、ボクの身体は過剰に反応した。何処までもポーカーフェイスで、多分表にボクの心情など露程も出ていなかったと思う。けど、空気は明らかにピリリと変化した。黙々と咀嚼するボク。その回数がやたらと増加すると同時に、箸を持つ手の動きは減少する。
 今井と過ごした時間は此処より長いから、親に対する思春期ならではの不満とやらはそれなりに理解した。口煩いとか過干渉過ぎるとか、色々愚痴を聞かされて、見ていて何となく解るなと感じた事もあった。けど……それが気の毒と思った事はない。ボクとは立場があまりにも違い過ぎて。ボクには生涯与えられぬそれを、ほんの僅か羨望の眼差しで見ていた事もあった。
 今井の母親は、いい母親だと思う。今井の家で過ごした時間が、脳裏に蘇る。母親代わりであって、母親でない。母親でないけれど、母親代わりになってくれた。箸の上手な持ち方を知らなかったボクに、一生懸命教えてくれた。いつも食事を用意してくれた。今井と言い合いしてたまに叱られた。けど、それは全部『愛情』だと言っていた。


 嗚呼、ボクモ、ソンナ温カイ親ガ、欲シカッタ。