I love you に代わる言葉

 リビングでは、今井とシンが二人でテレビを観ていた。テーブルには既におねーさんの作った料理が並んでいて、いい香りが部屋中に漂う。
 姿を現すボクに、視線を寄越したのは今井だった。
「何だよお前、体調悪いのか?」
 相変わらず空気の読めない今井が、そう声を掛けてくる。別に、と一言告げ今井の隣に腰を下ろすと、変なやつだな、と今井は呟いた。こいつだけ知らないとはいえ、話し掛けてはいけない雰囲気とかあるだろ。察しろよ。そう、心内でこっそりとボクは悪態をついた。
 四人で囲う食卓は久し振りだった。今井が居るだけで場が盛り上がるのはいいが、やっぱり今日はもう少し静かにしてくれないものかと思う。まぁ、三人だけの空気も耐え難いものがあったのかも知れないけど。シンやおねーさんは、今井の訪問に感謝しているだろうな。
 夕刻の出来事に対し、二人は何も言わなかった。その話題をちらと掠める事すらなかった。二人で相談し合った風でもないし、自然と触れてはいけない事と察知しているんだろう。けど、気遣われるのは、可哀想だと思われるのは、やっぱり不愉快だ。多分、今のボクは、気遣われてもそうでなくても、どちらにせよ苛立つんだろう。
 今井が楽しそうに何かを喋っている。何の話題か聞いていないから解らないけど、楽しそうな事だけは伝わってくる。それに対して返事をするシン、笑うおねーさん。ボク一人が取り残されているようだったけど、そんな事はどうだって良かったんだ。


 どうだって、良かったのに。