それからボク達三人の間に、交わされた言葉は無かった。バス停までの道程も、バスの中も。家に、到着するまで、始終無言だった。
 各々巡る感情はどんなものだろう。おねーさんとシン、解り辛いのはシンの方だった。一度だけおねーさんをチラッと見た時、目が合って微笑まれた。凄く、ぎこちなくはあったけど。その顔を見た時、おねーさんの心内を覗いてみたいと思ったが、何処かスッキリとした表情に見えなくもなかったから、少しだけ安堵した。
 シンなんかは目を伏せてずっと地面を見たままだ。押し黙るシンは怖いなと感じた。声を掛けられそうにない。掛ける気も毛頭無いけれど。
 あの女との出会いが齎したものは、ボク等に与えたものは、幸か、不幸か――……。
 雨足は弱まらない。ズボンの裾がビチャビチャだ。だけど、ザアァァと降り頻る雨音と、濡れて冷やされた足元が、妙に心地良かった。