I love you に代わる言葉

「――待ちなさいよ」
 無視して去ろうとしたけど、その声におねーさんが立ち止まった。それを見て、自然とボクもシンも足を止める。――こんな女どうでもいいよ、行こう――そう、おねーさんに声を掛けようとしたけど、ボクは何も言えなかった。おねーさんの女を見る目が、冷たく沈んでいくのが解ったから。いつもの、穏やかに微笑む優しい表情は此処には無い。
「まだ何か?」
 声も、少し低く感じた。女に向けるボクの憤慨も憎悪も、この時は微塵も無かった。ただ、おねーさんがどう出るかの方が気になっていた。
「あらあら怖い顔。綺麗なお姉さんもそうやって怒る事があるのね~。なあに? 連れてる男二人に声掛けたのがいけなかった? 私清純ですって見た目してるのに意外とやるのね~。男二人も引き連れてるなんて。しかも一人は超絶イケメンだし?」
 女は、相も変わらずニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていた。目元も、口元も、とても汚らわしい。
「――ヒカリ」
 呼ばれ、ボクは女を憎悪の眼差しで見た。
「あんたが何でこんな女と一緒にいるのかは知らないけどぉ、気を付けなさいよ? こういう女ほど腹の底で何企んでるかわからないし、本性を何処までも隠すんだから。清楚な女に騙されて嘆く男をあたしは沢山見てきたからね。あんたもろくな幸せ手に入らないわよ? それに、もしこの女が本当に清純だとしても、そんな女はつまらないわよ。あたしみたいな女の方が、男を満足させてあげられるんだから。あんたがいい子になってあたしのトコに来たら、少しは幸せになれるかもね」
 女は煙草を噴かしながら、おねーさんを侮蔑する発言を饒舌に並べ立てた。それに対するボクの怒りは、この人生で最も大きく燃え上がったかも知れない。