I love you に代わる言葉

 それから暫く歩くと、背後からくくっと押し殺した声が聞こえてきた。振り返るとシンが笑っていた。訝りながらボクが足を止めると、シンも程好い距離を保ち立ち止まる。
「日生、まだ行き先教えてくれねぇのか?」
 漸く声を掛けてきた。ボクが負けた気がするのは何故だろう。なにこの余裕そうな顔。不貞腐れた弟を見守る兄みたいじゃないか。……ムカつく。
 でも、ボクもいよいよ困り果てていて、教えてやるもんかと憎まれ口を叩く余裕は無かった。強い目的を持っていても、解らない事は誰かに頼らなければならないらしい。
 ボクはまごつきながら言葉を紡いだ。
「……おねーさんに……オルゴール、の、さ……」
 侘びをしたい。だからおねーさんの喜びそうなものが売っている場所を知りたい。
 そう言いたかったけど、結局一番重要な部分は言えなかった。決まりが悪く俯くボクを見て、シンはやれやれと肩を竦めてみせた。言わんとしている事を理解したのだろう。
「日生はどこまでも日生だな」
 シンは理解不能な言葉を発した。そういえば以前、今井にも言われた気がする。
 シンはボクの横を通り過ぎると、数歩前で立ち止まる。
「――こっちだ」
 振り返ってボクを見ると、言葉短くそう言った。
 格好つけたこいつに素直についていくのは何だか癪だったけど、そうする他無くて、今度はボクが無言でシンの後ろを歩いた。