I love you に代わる言葉



 十七時半を過ぎた頃、おねーさんが帰宅した。思わずドキリと心臓が跳ねる。悪い事をして叱られるのを怯える子供と、多分、同じ感覚だ。初めて持つ、感覚でもある。
 階段を上がってくる音が微かに聞こえてくる。おねーさんが自室へ入る前に呼び止めて、打ち明けた方がいいのだろうか。そんな事を考えていると、こんこんっと扉がノックされた。驚いて顔を上げる。
「……あの、日生くん?……」
 扉の向こうで遠慮がちに名前を呼ばれ、別の意味でもドキッとした。
 扉を開ければおねーさんが立っていて、解っていたけど何だか驚かされた。何か用? と問うのもちょっと違う気がして(自分の家じゃないのに偉そうだ)黙っていれば、おねーさんは嬉し恥ずかしそうにはにかんだ。
「あ、えっと……日生くんが今日から此処に来るって真から聞いていて……特に用事があった訳ではないんですが、日生くん何してるのかなって思って」
 おねーさんはそう言った。何だかくすぐったい感覚を覚える。
「今は……別に何も」視線を逸らしながら答えた。
 どうする……? 言うなら今しか無い、が、何と切り出せばいい。
「そうですか。自分の家みたいに過ごしてくれていいですから。いきなり寛げないとは思いますが」
 おねーさんはそう言ってにこりと笑った。ボクは礼を言おうとしたけど、その前におねーさんが「あ」と小さく声を漏らした。
「……!」