I love you に代わる言葉

「アンタさ、付き合ってる女いるの?」
 ベッドに腰掛けてテレビを点けるシンに問い掛ける。するとシンは酷く驚いていた。いつもの鋭利な目が、丸くなっている。
「何だ、突然だな。日生の口からそういう言葉が出るとは思わなかったな」
「別に変なコト言った訳じゃないだろ。で、どうなのさ?」
「いねぇな」
 即答だった。ボクはふーんと適当に返す。興味があるのかないのかよく解らない態度が可笑しかったのか、シンは苦笑した。
「自分から聞いておいて素っ気ねぇな。ていうか日生、首に掛けてるだけじゃタオルは汗拭いてくれねぇぞ」
 シンはそう言って笑う。ボクはムッとして「解ってるさ」とやや乱暴に答えた。
 使用済みタオルは洗濯機に入れてくれと言われ、ボクは洗面所へ向かう。すると、扉が開け放たれたままのおねーさんの部屋が目に入った。おねーさんは今留守だ。ボクは部屋の前で立ち止まる。
 消灯されていても昼間は明るい部屋。生温いけど爽やかな風が窓から入り込み、淡い水色のカーテンをふわりと揺らした。ボクの視線はベッド横に向かう。写真立てはそこにあった。けど、あの時と同じように伏せられていて。やっぱり、とボクは思った。やっぱりあれは、元々伏せられているもので、ボクが来るからとか関係無かったんだ。
 ボクは写真に何が写っているのか知りたかった。けど、勝手に部屋に踏み入れる事も躊躇われる。数秒好奇心と闘い、ぐっと奥歯を噛み締める事と拳に力を入れる事で、何とかそれに打ち勝つ事が出来た。
 左の引き戸を引き、洗濯機にタオルを入れると、シンの部屋に引き返す。おねーさんの部屋の前で、もう一度だけ伏せられた写真立てを一瞥した。