*
「行きましょうか」
優しい声が掛かる。靴を履き、とんとんっと軽快な音を立ててつま先を地面に当てる動作をした。
ボク等は図書館へ向かう為歩き出した。まずバス停まで十五分程歩かなければいけないらしい。二人で並んで歩くなんて冗談じゃない……何か無理だ。色々と無理だ。不自然な距離を開けながら、更に半歩後ろを歩く。二人でこうして歩く事が嬉しいのか嫌なのか、今どういう感情が巡っているのか、自分でもよく解らない。けど、おねーさんはボクを振り返り、笑い掛けてくれたり喋り掛けてくれたりして、気まずい沈黙が訪れる事は殆どなかった。多分、おねーさんが緊張していないんだろう。……複雑だ。
「何だか不思議ですよね。日生くんとこうして歩く事になるなんて」
「……まあね」
「知り合った頃と比べると、日生くん、何だか雰囲気が変わりました」
「……そう?」
「はい。ふふ」
おねーさんはずっと嬉しそうに笑っている。だけど多分これ、恋愛感情を持って嬉しそうにしている顔じゃないと思う。懐かなかった猫が懐いてくれて嬉しい、みたいな感覚じゃないだろうか。……複雑だ。
でも、それでもこんな時間が自分に与えられるとは夢にも思っていなくて、ボクはそれなりに、嬉しいと感じている。緊張も多分、している。複雑だ、何か色々複雑だ……変化の著しさに、反吐が出そうだ。
「行きましょうか」
優しい声が掛かる。靴を履き、とんとんっと軽快な音を立ててつま先を地面に当てる動作をした。
ボク等は図書館へ向かう為歩き出した。まずバス停まで十五分程歩かなければいけないらしい。二人で並んで歩くなんて冗談じゃない……何か無理だ。色々と無理だ。不自然な距離を開けながら、更に半歩後ろを歩く。二人でこうして歩く事が嬉しいのか嫌なのか、今どういう感情が巡っているのか、自分でもよく解らない。けど、おねーさんはボクを振り返り、笑い掛けてくれたり喋り掛けてくれたりして、気まずい沈黙が訪れる事は殆どなかった。多分、おねーさんが緊張していないんだろう。……複雑だ。
「何だか不思議ですよね。日生くんとこうして歩く事になるなんて」
「……まあね」
「知り合った頃と比べると、日生くん、何だか雰囲気が変わりました」
「……そう?」
「はい。ふふ」
おねーさんはずっと嬉しそうに笑っている。だけど多分これ、恋愛感情を持って嬉しそうにしている顔じゃないと思う。懐かなかった猫が懐いてくれて嬉しい、みたいな感覚じゃないだろうか。……複雑だ。
でも、それでもこんな時間が自分に与えられるとは夢にも思っていなくて、ボクはそれなりに、嬉しいと感じている。緊張も多分、している。複雑だ、何か色々複雑だ……変化の著しさに、反吐が出そうだ。

