――あんたなら、姉を救える。


 シンの言葉を思い出す。
 いつも、あんなにも綺麗に微笑んでいるおねーさん。会えばいつも優しい眼差しで笑いかけてくれる。仕事を終え、プライベートでありながら、今日もそうだった。黙っている時の大人びた上品な表情、破顔した際に見える美しい歪み、嬉しい時や好きなものを語る時の、子供のような無邪気な姿。
 一瞬たりとも憂いを帯びた表情を見た事がない。まぁ、付き合いなど皆無な自分に見せる訳がないのだが。
 だけどシンの言葉の意味を、知ろうと思った。今日おねーさんに会って、知りたいと思った。
 知る為だけに、知るんじゃない。
 ボクが救えるのなら、どんな事でもしよう。ボクに初めて『ひかり』をくれた、おねーさんの為に。
 知る為にだけに、知るんじゃない。救う為に、知ろうと思う。
 そこに踏み込む勇気と覚悟を持とう。
 ボクは決意を固めると、箱をテーブルに戻し、そっと目を閉じた。