I love you に代わる言葉

「あと、これなんですが」
 おねーさんは左手を、先程よりもやや近付けて見せた。そこにあるのはもう一つの、ラブラドライトだ。
「日生くんの名前、“ヒカリ”と言うんですよね? ごめんなさい、真から聞いて……」
 ボクは驚いておねーさんの顔を見た。そして次にシンを見た。シンは、「いけない事だったのか?」というようなやや驚きを含んだ表情をしていた。それを見て瞬時に理解した。おねーさんは多分、ボクが自分の名前を嫌っているから名字しか教えなかった事まではシンに言わなかったんだろう、と。だから今二人は、何故おねーさんが謝罪したのか解っていない筈だ。
 もう一度おねーさんへ視線を向ければ、おねーさんは心底申し訳無さそうな表情をしていた。その表情と謝罪が意味するのは、聞いてしまった事と、知る術を持っている事を隠していた事じゃないかと思う。
「いいよ謝らなくて」
 素っ気無く、聞こえただろうか。おねーさんは何処か困惑したように、曖昧に笑って見せると、手元に視線を落とした。手首をゆっくりと捻らせ、石の角度を変える。ラブラドライトの表面に、夏の黄昏時を思わせる、憂いと艶やかさを交えたような黄と橙の光が浮かび上がる。石全体が光っている。これ、上質なものなんじゃないだろうか。以前光る原理を聞いたが、それでもやはり不思議なものだ。
「この石、日生くんは嫌いだって言いましたが、私は好きです。真から日生くんの名前が『ヒカリ』だと聞いた時に、ふと、この石を嫌いだって言った時の事を思い出しました。何だか日生くんとこの石……似てる気がするんです。お互いに『光』を持ってる。何処か暗く寂しい色の中で。その光が凄く、」
 ――温かい。
 おねーさんはボクの目を真っ直ぐに見て言った。