I love you に代わる言葉

 ややあって疲労感に包まれる。汗が冷房によって冷やされ、少し寒い。深い吐息を漏らせば、シンは悪戯が成功した子供のような無邪気な顔をして、くくっと心底可笑しそうに笑い、今井はシンの気の利き過ぎる行動に苦笑を漏らしながらも、面白いものを見られたという何処か満足気な表情をしていた。
 未だ扉の近くに立っているシンに、鋭い視線を送る。
「くそっ……アンタ、覚えてなよ……」
「へいへい。そんな顔して言われても怖くないけどな」
 シンは余裕たっぷりにそう言うと、のろのろと先程まで座っていた場所に再び腰を下ろした。
 そんな顔、と言われて顔に熱が集中する。
「日生も今井も、意外に純情だよな」
 そう言われて、ボクは更にムッとした。子供だと言われているみたいで不愉快だった。
「意外に、は余計だ。でも日生は確かに純だな。見てるとおもしれーくらい」
 今井がそう言ってカラカラと笑うから、テーブルに置かれたままの教科書を素早く手に持って、それで今井の頭を叩いた。いでっ、と馬鹿みたいな声を上げる今井を軽く睨めば、頭を押さえながら目を吊り上げた。
「何で俺だけ叩くんだよ! こいつと俺、扱い違い過ぎるだろ!!」
 シンをビシッと指差して今井が言うが、ボクはたった一言、
「キャラだ」
 そう言った。
「なっ……! ひでぇ……」
 今井は怒るより、わざとらしくがっくりと肩を落として見せた。シンは茶を啜りながらボク等のやり取りを見て笑っていた。
「てかお前のねーちゃん、何で玄関じゃなくあっち行ったんだ?」引き戸の向こうを顎でしゃくりながら今井が問う。
「ああ、自分の部屋にも幾つかあるからな、そっち取りに行ったんだろ」
 おねーさんの部屋か。見てみたい、そう思った。