I love you に代わる言葉

 ボクは、あまりに想像の域を超えた発言に呆けていた。
 鳩が豆鉄砲食らったような顔とは、まさに今のボク達の事だろう。
 笹山真はボク達の呆気に取られる様子など初めから想定内だったらしく、くくっと可笑しそうに笑っていた。
「驚いたか? 日生様は単刀直入がお気に召すと思ってな。俺は親と離れて暮らしてるんだ。部屋も俺の部屋を使ってくれていい。俺はリビングでも何処でもいいからな。だからって、別に今井の家から出ろと言ってる訳じゃねぇ。互いの家を行き来してもいいし、その日の気分で決めてもいい。ただ、親が近くに居ない分、俺ん家の方が長い目で見られると思うぜ」
「いいじゃねーかそれ! おい日生っ、笹山ん家住んだら、お姉さんに会えるかも知れねぇぞ? お姉さんのプライベートだぜ? うわーいいなー、俺も行きてぇ!」
 笹山真の言葉に喜びを露にしたのは、ボクではなく今井だった。瞳を輝かせながら何とも浮き浮きとしている。
「ああ。今井も来いよ。遊びに来てもいいし泊まって行ってもいい」
「マジか!? よっしゃ!」
「――ちょ、ちょっと待ちなよ」
 二人のやり取りについて行けず黙りこくっていたが、此処で漸く言葉に出来た。だけどボクには珍しくどもってしまった。幾らか動揺していたらしい。
 落ち着ける為、一つ息を吐いた。
「まぁ……有り難い話ではあるけどさ、アンタ何で知り合って間もない奴にそこまで出来るワケ?」
「――あんたを、気に入ったからさ。」
 即答だった。穏やかな笑みを目尻と口元に乗せて、笹山真は言った。破顔した訳でもないのに、その笑みはとても穏やかと表現出来るもので。笹山真は目を伏せ、「……いや、あんた達を、だな」と付け加えた。
「俺もか?」自分を指差しながらきょとんとした顔で今井が問うと、笹山真は「ああ」と短く答える。それが虚言でないとその目が語るが、ボク等は当然解せなかった。