<海人>



「ちっ!」


 海人は小さく舌打ちをする。


 決戦は、廃ビルの中だった。


 対戦相手は、赤目の軍属狙撃主ジーク。


 少しでも自分に有利になるように、狙撃主が一番嫌う人気のない廃ビルを選んだはいいが・・・それでも海人は追い込まれていた。


「サイボーグか・・・厄介な相手や。」


 銃に弾を詰めながら、海人がぼやく。


 隠れる場所も多量にあるし、何よりも銃声が反響する廃ビルの中では、狙撃主相手にいくらでも逃げられると思っての算段だったが・・・さすがに、体温までは隠れない。


 赤外線センサー。


 あれが、厄介なのだ。


「移動しているか・・・。」


 海人は足音を探る。


 音が反響するのだ。


 耳を澄ませば赤外線なんて頼らなくても、どこにいるのかぐらい見当はつく。


 お互いに、いる場所は十分に把握している。


「皐月を使うべきだったか・・・。」


 海人は、自分の判断が甘かったことに、今さらながらに後悔していた。


 もちろん、ギアを使えば勝機はこっちにあることは、言うまでもない。


 それこそ、この廃ビルごと破壊してしまえばいいのだ。


 だが・・・それは、あまりに反則・・・。


 いや・・・。