一面の荒野・・・。


 確かに、ここなら邪魔は入らず、思う存分動き回ることが出来る。


 由良はそこに立っていた。


 そう、ただ一人立っていたのだ。


「どうして、来たの?」


 声は後ろから聞こえた。


 漆黒のワンピースを着た、幼い美しい少女。


 その姿はどこからどう見ても人間だ。


「呼ばれれば来るさ。」


 由良は、とりあえず答える。


 既にいたるところに武器は隠している。


 いつでも、飛びかかれる体制は整えている。


「でも・・・あなたじゃ、私に勝てない。」


 8は威嚇するでもなく、挑発するでもなく・・・それが、ただの事実であるように答えた。


「だろうね・・・俺も正面突破じゃ君に勝てるとは思えない。」


 だから、由良もただ事実だけを口にする。


 そう・・・確かに、正面突破では勝ち目がない。


 正面突破では・・・・。


「だったら、なんで・・・?」


 8の質問。


「勝てると思ったから。」


 由良の答え。


「ばかだと思うよ。」


 先に動いたのは、8だった。


 それこそ、人の目では追いかけられない速度で、由良の背後に回ると、一気にその腕を伸ばす・・・が・・・。