<Vampire>


 その部屋はとても、小さく暗い部屋だった。


 光源となる窓はなく、ランプも電球すらその部屋には存在しなかった。


 ジュードはそこで、ただ・・・何を見つめるでもなく、タバコをふかしていた。


「魔法使い・・・・か・・・。」


 その瞳は赤く光り、この漆黒ともいえる部屋の中で、唯一の光源と言っていいほどの明るさを放っている。


 ・・・・・・戦闘は既に始まっていた。


 魔法使い。


 かつて、中世ヨーロッパにその名を持つ者は多量にいた。


 自らの手を汚さず、自らの顔を見せず、ただただ闇に潜み、古の呪文を持ちて、人を殺す悪魔。


「俺にはお似合いの相手だな。」


 ジュードは再び、そんな言葉を口にする。


 ヴァンパイア・・・闇に生き、闇と共に過ごす、人ならざる者。


 人の生き血をすすり、えさとする・・・悪魔。


 まさに・・・お似合いの相手だった・・・。


「引いたか・・・懸命な判断だな・・・。」


 そこまで口にすると、見る見るジュードの瞳の色が真紅からアイスブルーの美しい瞳に変化する。


 魔法使いらしい精神攻撃。


 どこからか、呪いの呪文でもかけたのだろう。


 肉体ではなく魂に直接害をくわえる、彼ららしいやり方だ。


 いかに強靭な身体を持とうと、魂までは鍛えられない。


 どんなに屈強な戦士だろうと、今の攻撃の前では一瞬にして破滅させられていただろう。


 ・・・・・だが、相手が悪かった。