「相原(あいはら)、こいつと背比べしてみてよ」

「え」



フイに話を振られて吃驚する。

けどそれ以上に桜井君のあんぐりした表情が目についた。



「身長いくつ?」

「……157かな」

「駆といい勝負じゃん。立って立って!」



葉山君、桜井君絶対嫌がってるよ。

なんて言える空気でもなく仕方なく立ちあがる。

ほらおまえも、と半ば強引に立たされた桜井君が私の前に立った。



「……」



いざ真正面から見ると、言うまでもなく桜井君は小さかった。

入学したてですかって聞きたくなるくらいブレザーはぶかぶか。

肩幅がないから余計に小さく見えるし、身体のラインも細い。

透き通るほど白い肌。夜の闇のような黒髪。

朝の明るい雰囲気からは少し浮いているように感じた。



「比べるまでもないでしょ」



ハッとして顔を上げると、葉山君の手を振り払っている桜井君が映った。

どうやら私と桜井君を背中合わせにしたがっていたらしい。


私が言うのもアレだけど、それは公開処刑だと思う……。


すっかり機嫌を損ねた桜井君は葉山君を追い払って机に寝そべった。