――始業式の次の日、新学期恒例の席替えが行われた。

緊張しながらひいたクジは、一番後ろの窓側から2番目。

けど肝心の隣の席は空席で。

窓側一番後ろという最高の席で来ないなんて勿体無い、とクラスのみんなが騒いでいた。

そしてなぜ欠席なのだろうという話題になり、挙句の果てには喧嘩して怪我でもした、なんて説も出たくらい。


……でも。それは絶対ないな、と今なら確信できる。



「駆!おまえやっと学校来れたのかよ!」



マジマジと桜井君を見ていると、全力でこっちに向かってきた人物が桜井君の肩をばしっと叩いた。

クラスの中心人物でもある葉山(はやま)君だ。

誰とでもすぐに打ち解けている彼とは私も何回か話したけど、もしかして桜井君と知り合い……?


当の本人は何が起きたのかわからないのか、痛みよりも驚いているようだ。

その数秒後に「痛っ」と反応をした。



「始業式3週間も前だぞ?出遅れすぎだって!」

「……しょうがないだろ。これでも予定よりは早く来れたんだってば」



肩をさすりながら不機嫌そうに答える桜井君。

が、そんな抵抗も虚しく、今度は頭に手を置かれる。



「相変わらず小さなー。身長伸びたか?」

「測ってないから知らないよ」

「大半の女子がおまえよりでかいんじゃね」



葉山君の言葉にムッとしたように顔を顰める。

けどその反応も幼いというか、身長相応というか。

同い年には見えない姿に思わず口元が緩むと、葉山君がこっちを向いた。