嫌な夢を見て起きると、
誰かが私の手を握っていた。
ベッドの横で座って顔を伏せ眠っていた陽翔だった。
あの日以来、
人間不審になった私は、
陽翔にも近づけなかった。
私は陽翔の手を握り返した。
たった1人の兄は、
何度も私を助けようとしてくれた。
本当はすべて聞きたいはずなのに、
私が話すのをなにも言わず待っていた。
「ん…。心和!!大丈夫?
心配して早く帰ったんだから!!」
あの出来事を陽翔に伝えたのは、
地元を離れる決心をした日だった。
「お兄ちゃん…。」
「ん…。
心和!!大丈夫かっ?!」
勢いよく顔を上げた陽翔。
可愛い顔をした陽翔も、
この顔ゆえにツラい目にあってきた。
いつも2人で乗り越えたんだよね…。
「すっげぇ心配したんだぞ?!」
「ゴメンね…。
もう大丈夫。」

