ボーっとしている私に気付いたのか、
彼は席に座るよう促した。
「心和?
調子悪いか?」
「え?いや、大丈夫。」
本当は嘘だった。
雨に濡れて、
それに色んなことを考えていて、
頭が痛い…。
気付かれないように笑顔を向けた。
「悪ぃ。
奈悠美、また来るわ。」
え…。
彼はそう言ったのだ。
「何だよ、
賭けに負けたからって、
ここちゃん独り占めかよ。」
「まぁな。」
「ちぇ。
ま、いいや。
ここちゃんまた来てよ!!」
「うん。
なっちゃんありがとう。」
なっちゃんはそう言うと、
人懐っこい笑みを浮かべた。
あ…。
そうだ。
なっちゃんはいつもこうやって笑って、
八重歯がチラリと見えるんだった…。
誰とでも仲が良くて、
男の子が苦手な私にいつも、
馴れさせようと遊びに誘ってくれたんだ。
「ここちゃんまたね!!」
「…?!
うん!!またね!!」
あの頃のように、
私も昔みたいな笑みを返した。