……夜は涙と共に明けた。いや、涙は枯れたと言ったほうがいいだろうか。

 そろそろ体内の水分量が限界に達したのか、酷い倦怠感を訴える身体は眠りもせずに只管固まっていた。

 別に昼夜逆転なんて、私にとって珍しいことではない。今度こそカラカラになった身体を潤すために、寝静まった家の中、足音にさえ気を遣ってキッチンへ歩く。

 そう言えばお父さんは帰ってきたのだろうか、気にはなるけれど確認する程のものでもなかった。何だかもう、すべてがどうでもいい。

 冷蔵庫を開けてお茶の容器からガラスのコップに麦茶を注ぎ、冷蔵庫に片す前に一気に飲み干す。渇きが癒える感覚は微塵もなくて、もう一杯、二杯、と容器が空になるまで飲み続けた。

 新たにお茶を沸かさないと、と思いはしたけれど、容器さえ流しに置いたままに私は部屋に戻る。

 今摂れる限りの水分を摂取した身体を今度こそ寝かしつけるために、窓から差し込む朝日を遮るように、羽毛布団を被った。


 夢の中でもなんでもいい。私を、ここじゃないところに、いっそ閉じ込めて欲しい。そんな浅はかな願いを、心の隅に宿したまま。


 その“浅はかな願い”が直ぐに叶おうとは、流石に予想しなかったけれど――。