「……さぁ、どうだろうね?」


 曖昧な笑みと共に返された言葉は、何となく期待していたものではなく。別に彼が悪いわけでもないのに、被害者ぶって傷つく私がいた。気分が悪い。

 そう、期待していたのだ。なんて汚い感情だろう。期待できる程の人間ではないだろうに。

 具体的な、答えが。たった一つでもあれば。人から認めてもらえる何かが、私に。


 考えたって、無駄なのに。


「…何してるの」


 一人着々とマイナス思考に嵌って悶々としている私に、遠慮なくカメラを向ける彼。楽しそうな表情は、確実に気のせいではない。


「いや、貴重な表情だと思って」


 全く、つい先程まで悩んでいたのが馬鹿らしくなってしまう。肩の力が抜けて、乾いた笑い声が喉から漏れた。


「やっぱりいいねぇ、色んな表情が見られるって。こんなに長く君のこと見てきたのに、初めて見る表情ばかりだ」


 その言葉に、私の表情は一気に白くなる。恐らくそれは、彼に浚われたことによる動揺だとか、長時間共にいるからこそだとか、そんなものではない。

 変わってしまったのだ。私が。


「美波ちゃん?」


 あぁ、首を絞める。他の何でもない、私自身の思考に、苦しめられる。