……本当に、私は一体何時間眠ればいいのだろう。いや、そんなふざけたことを考えるような状況ではない。

 このやけに深かった眠りに就いた切っ掛けは、確か。覚めやらぬ意識のままに周りを見ようと、瞼を持ち上げる。

 軽く目を擦ろうとしたところで、私は漸く両手両足の自由が奪われていることに気づいた。


「あ、目が覚めた?」


 傍の壁側に顔を向けて横たわっていた私は、芋虫状態の身体を反動をつけて回転させ、声の主のいるであろう方向を見た。

 しかし、その人物の姿に目が辿り着くより前に、とんでもない光景を見てしまった。


「何、これ………」


 壁板より上、殆ど全面に貼られた写真達。左側はガラス戸になっていて、そこにもやはり、戸を引いた時に重ならないところにはびっしりと。

 更によく見ると、その写真に写っているのは全て――…


「あぁこれ、すごいでしょ。一番古いもので、二年くらい前のものだからね」


 再び聞こえた声に、やっとその主を見た。折り畳み式の低いテーブルに勉強道具らしいものを広げているその男は、おぼろげな印象しかないにせよ、ほぼ間違いなく、先程玄関で会った男。