――今日で何度目になるだろう。確か最初にこの鉢植えが届いたのは、二か月程前だった筈。

 ずしりと重い石楠花の鉢植えに、抱え込んだ身体ごとよろめく。毎度毎度これを庭まで運ぶのが億劫で仕方なく、純粋にそれに対して溜息が出た。

 宅配されたばかりの段ボール箱を開梱したのは、宅配便のおじさんがそれを置いた玄関前の廊下。

 中身なんて届いた時から分かっているのに、わざわざ自室に持ち込む理由もない。


「威厳、ねぇ……」


 一度なら人によって出方も違うかも知れないけれど、こう何度も同じ鉢植えが届けば、普通は花言葉くらい調べるだろう。

 私もそれに漏れず調べてみたのだけど、その中で一番知れているのは威厳、だそうで。

 送り主がどんな意図でこの木を贈っているのか、さっぱり見当もつかない。けれど、一つ言えることがあるなら、私に威厳なんてあったものではなくて。

 ピアノにお習字、水泳に新体操。何事も経験だという両親に様々な習い事に通わされたけれど、結局はどれも挫折してしまった。

 勉強も運動も可もなく不可もなくと言ったところで、人に誇れるものなんて何一つ持ってはいない。そんな自分がどうしても好きになれないまま、今まで淡々と過ごしてきた。