こんなことしてもらう
資格なんて、

あたしには、ない…


パシャッ

千紗が走って
佐々木を追いかけた。


「佐々木くん、待って!」

「!?つづ…」

「傘いらない。あたしは、佐々木くんに傘貸してもらう資格なんてない」

「……」

「だから、これは佐々木くんが使って」


あたしはグッと、

傘を佐々木くんに押し付けるように
差し出した。

その間も雨は
あたし達を容赦無く濡らしてく。


冬の雨は冷たくて、
寒くて手が震える。


「…俺には、これくらいしか出来ない」

「え?」

「都築のこと、諦めた訳じゃない。でも、今の俺にはこれくらいしかしてやれない」