泣き虫じゃないよ、と言うその少し強気な
ところも彼女にそっくりで、自然と伸びた右手は女の子の頭を撫でていた。
『お兄ちゃんのお声も手も、すっごく
ママに似てるの』
眸の奥にじわりと感じた不可思議な熱。
それはどうしようもなく嬉しくて。
どうしようもなく…——悲しかった。
『お腹が痛いの?なでなでしてあげる。
ママもね、よくなでなでしてくれるの』
俺の様子に気付いてお腹を一生懸命撫でてくれるその小さな手のぬくもりに気持ちがすっと軽くなる。
「っ、…………ありがとう」
まるで、魔法の手だと思った。
聞けば女の子はやっぱり迷子らしくて、
ママを探そうと言えば甘えるように俺に
抱きついた。
繋いだ手は、俺の手よりもずっとずっと
小さなそれで。
あの日、あの夜。俺の腕にそっと触れた
彼女の優しい手を思い出す。
公園に向かう途中にアイスを食べた。
泣き止んだ女の子へのご褒美に。
女の子はストロベリーで俺はチョコ。
手は繋げないから2人で座って食べた。
『お兄ちゃん、聞いてもいい?』
「いいよ」
『お兄ちゃんは、
——————…好きな人はいるの?』
「………いるよ」
とても、大切だった人が。

