只今、琉聖の部屋です。
そーして、さっき知った事実。
あたしと琉聖は、同室だった。
部屋の間取りは、玄関から奥の部屋まで狭くもない廊下が続いている。
廊下の左右には、オレンジのドアと水色のドア。
2つのドアは各自の自室らしい。
ちなみに、水色のドアの方が、あたしの部屋。
一番奥が、キッチンとリビングだ。

「案外広いのね。」
「まぁね♪キッチンは自由に使って良いって。」
「そっか~わかったぁー」
まぁ、料理は…できなくもない。
使う気もない。ここは、琉聖におまかせ!

「荷物は、もうあずちゃんの部屋に運んであるから。」
「うん。ありがとう!」
「いえいえ!あっ!琉聖っオムライスには、ニンジン入れないでねっ!!」
琉聖は、エプロン姿でキッチンに立っていてもう、料理を作り始めている。
イケメンは、かっぽうぎ着ても似合うなんて……。
罪だね。

「ダメだ。ニンジンは入れる。」
「やぁーーーだぁぁあっ!」
「ちょ、薫。ニンジン食べなよ(笑)」
「やだっ!あんなまっずいのたべらんないっ!」
「おいしいよ(笑)」
「マズいっ!あんな物が食べられるなんて、あずちゃんは怪物だねっ!」
イラァ…。
誰が怪物やねん。

「薫。しっかりニンジン食べないとイケメンになれないぞ。」
「まじかっ!」
どうやら、薫くんイケメンになりたいそーで。
それ以上イケメン天使になってどーすんのよ。皆、鼻血ものだよ。

「梓は、なんか嫌いなものあるか?」
「え!?あたしはー…」
「何々~?あずちゃんの嫌いな物ってー(笑)」
「ちょっ…薫くんやめて。ニヤニヤしないで、えーっと…あたしの嫌いな物は……」
薫は、ニヤニヤしながら私の言葉を待つ。
ややややややや。無理!言えない!
え?なんでかって?そりゃー…

  私の嫌いな物は…そう…
         ピーマン……。

恥ずかしくていえませんよ!
嫌いでも、ちゃんと食べられるし。

「早く言わないと、くすぐっちゃうよ(笑)」
「やややめやめ!言うよ。言います。私が嫌いなものは、ピーマン。」
「…。」
「…。」
なぜか、何も言わない二人。
当然のように訪れる、沈黙。

「ぷっwwウケるぅぅぅううっ」
「ピーマンか。」
「なっ!薫っそんな笑うことないてしょっ!?」
「だって…ぶっw俺よりお子ちゃまじゃん」
薫。お願いだからそんなにバシバシ叩かないで……。
私の肩が沈没するから…!
なお、叩き続ける薫。

「…いっ…だろ。…」
「え?なんだって?」
「だから…いってぇってんだろ!」

がぁぁあん!

あーぁ。やっちった。
吹っ飛ぶ薫。驚く流聖。
つい、イラッとしちゃった私は、薫を殴り飛ばしてしまった。

「か…薫!ごめん!!!」
「ぇ、え?えええええ?」
「薫、とりあえず落ち着け。」
や、落ち着いてられませんよ!
薫、鼻血出てるじゃん!

「あー…と、大丈夫。(笑)」
「だっ!鼻血出てるしまだ!」
「薫、ほらティッシュ」
「センキュ〜」
「にしても、梓…すげぇな!」
え。や、そんなキラッキラッした目で見ないでよ。
すっごく、恥ずかしいだけど!
会ったばっかりの薫を、ぶっ飛ばすのどこがすげぇのよ!!!!

「梓。お前、今日から織姫になれ。」
「「え?」」
私の声と薫の声がかさなる。
え?織姫?おーりーひーめ?
頭沸いたの?なぜ?
そもそも織姫って何って話なんだけどね....。
あまりにも慌てている薫は、流聖の胸ぐらをつかみブンブン揺さぶる。

「おい!流聖お前っ!わかっっ!わかってんのかっ?!おいっ!無視すんなっ!」
とりあえず落ち着けよ。噛みすぎだって。
そんなにブンブンしてたら話せないって。

「ちょっと。薫、手を止めなさい。」
「むぅ。」
「げほっげほっ....俺は本気だぞ。薫。」
多少むせながら薫に真面目に答える流聖。
私は私で何が何だかサッパリ。
それに気づいたのか、流聖はニヤリ。
え。ニヤリ?

「梓。」
「なっ....なに?」
「お前は織姫だ。」
「や、あの。織姫って?」
「あずちゃん。織姫ってゆーのはね、俺たち、黒星。いわゆる族のねお姫様なんだよ。俺たちはそれを織姫って呼んでるの。もちろん、織姫になれるのは総長の彼女だけってことなんだけど....。」
「んで、その黒星の総長が俺。」
え。
って事は。
私は流聖の彼女で、
黒星ってゆー族のお姫様....?

「あの。えっと。」
「言っとくけど、梓に拒否権はねぇ。」
「っうぇっ!」
「あずちゃん。ドンマイ。」
ややややっ!そんなっ!薫が真顔で言わないでよ!
拒否権ないならなるしかないじゃない!

「わっ....わかったわよ!なりますよ!拒否権ないんでしょっ!?」
「そうだ。」
「だったら、なってやるわよ!」
「クックっ」
「何笑ってんのよ!?」
「んでもねぇよクックっ」
絶対何かあるって!
だけど、ずっと笑い続ける流聖。

「とりあえず、あずちゃんっおめでとう!これからもよろしくね!織姫っ!」
「ちょっあんまり織姫って呼ばないでよっ!恥ずかしいっ!」
「えぇー?いいじゃーんっ織姫っ」
「かーおーるぅうっ!」
「薫。お前の織姫じゃねぇぞ?」
「はいはいっわかってますよぉ」
こんな事が毎日続くのだろうか?
でも、こんな日常も楽しいなって思っている私もいる。

「あんさぁ~そろそろご飯食べようよー腹へった~」
「そうだな、食うか」
「オムライス!食べよ!」
知らぬ間に作り終わっていたオムライス。
少し小さめの四角いテーブルを3人で囲いオムライスに手を付ける。
オムライスを口にした私は驚いた。
だって....。

「うまっ!何これ!卵ふわふわだし!」
「美味しいよね!」
「やばいよ!美味しすぎ!天才流聖!」
「....。どや。」
「「え?」」
「なんだ?」
「どやって(笑)」
流聖の顔と言葉があっていない、ちょっとニヤけながら『どや』って....。