「ご、ごめんね…蓮…」


キッチンからひょこっと顔を出した琴羽は、目に入った光景に思わず駆け寄った。


「ちょ、蓮…っ?!」

「んだよ」


琴羽の反応に、居心地悪そうに蓮が顔を上げる。

彼の手元のお粥は綺麗に空になっていた。


「…食べたの?」

「ったりめ-だろ」


ん、と差し出され、反射的に受け取った琴羽は確かにお椀が空になっているのを確認した。


「だってあんな反応してたじゃん!!」

「飯は無駄にしねぇのが俺ん家の決まりなんだよ」

「でも…」


未だ納得しない琴羽。


「そんなに心配するんだったら、今度はもっとマシなもん作れ」

「え…」

「俺の機嫌が良ければ食べてやらないこともないけど…」

「……!!」


胸がとくん、とくんと高鳴る。

やっぱり蓮は、みんなが思ってるような冷たい人なんかじゃない。

だって言葉は乱暴だけど、なんだかんだ優しくて…━━

きっと不器用なだけなんだよ。


「まあ、場合によっちゃ殴り殺すけどな」

「………」

「俺は寝る」


一方的に話し終わると、蓮は再びソファーに横になって目を閉じてしまった。

前言撤回。

やっぱ蓮は意地悪。


「………もぉ」


琴羽は呟いて、空のお椀を見つめる。

それから蓮に視線を移して、そっと微笑んだのだった。