「きゃあっ」


部屋に入るなり、未花は強く突き飛ばされ床に倒れこんだ。


「なにする「…で? どうすんの?」


顔を上げた未花の前に薬の入った袋をひらひらとちらつかせる春也。


「買うよな?」

「……っ」




怖い。

今にも崩れそうな腕に力を込めてなんとか保つ。


「い、いりません。私帰ります!!」

「って…」


春也の腕を振り払い玄関に駆け寄る。

しかし、ドアノブに手を伸ばす直前で壁に押し付けられた。


「うっ…」

「元気がいいなぁ、未花ちゃんは」


言葉とは裏腹に、押し付ける手に力がこもる。


「かはっ…」

「俺にここまでさせて…。最初は無料にしてやったんだ、次の分もやるから金出せよ」


声を出したくても苦しくて何も言えない。

ただ喉の僅かな隙間から、ヒューヒューと息が漏れるだけだった。


「金貰わないと俺が上の奴等にボコられんだよ。辛いこと忘れたいんだろ? 金だせよ!!」

(琴羽…っ)


恐怖で涙が溢れた。

苦しさと恐怖で意識が薄れかけたその時、勢いよくドアが開いた。


「未花!!」


琴羽が駆け込んできて息を呑む。


「っの…、てめぇっ!!」


続いて入った蓮は、素早く状況を理解し春也を殴り付けた。


「ぐっ…!!」


春也が壁に突っ込み、様々なものが散らばる。

琴羽は未花を抱き寄せた。


「未花、大丈夫!?」

「っかは…、はぁはぁ…」


薄れかけた意識の中で、なんとか頷く未花。

蓮はそれを見て、一息ついた後春也に近づいた。









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