翌日。

未花と一緒に廊下を歩いていた琴羽は、機嫌が悪かった。

昨日の放課後の出来事が甦ってきて、イラッとする。


「…でね、って聞いてんの琴羽!!」

「うぁ?」


上の空だった琴羽に気付き、未花が声をかけるが琴羽は案の定聞いていなかった。

未花は地団駄を踏む。


「だからぁ、昨日カッコイイ人がいたんだってぇ!!」

「へぇ…」

「あんね、背が高くてぇ…」

「……」


未花は自分の世界に入り込み、うっとりと話を続けるが琴羽は全く聞いていない。


(これから毎日あいつと顔を合わせなきゃいけないわけ!?)


席が隣というのがまた気にくわない。


(比奈に頼めば席を代わってくれたりして…)


なんて考えて教室のドアに手をかける。


「琴羽の馬鹿!放課後また話聞いてもらいますからね!!」

「はいはい…」


まだ何か言おうとした未花に軽く手を振って、ドアを開きかけた琴羽だったが、それよりも先に勝手にドアが開いて、誰かに当たってしまった。


「あ、わりぃ…」

「つっ…」


額を擦っていると頭の上から声降ってきて、琴羽は顔を上げた。


「「…あ」」


そして両者は固まってしまった。