「とりあえず落ち着けよ」

「うん…」


座り直す蓮を見ながら、深呼吸。

蓮は再び雑誌に目を落とす。


「その未花って人には友達がいないわけ」

「さぁ…」

「……」


物言いたげな蓮の視線が痛い。


「あんたその人の親友なんだよね??」

「は、はい」

「なんで、簡単なことが答えられないわけ」

「……」


蓮の言葉に俯く。

本当にそうだ。

私なにやってるんだろ。

親友のことも分からないなんて。


「ひとまず話してみれば」

「……」

「甘いものでも食べれば、その人の怒りもすこしは収まるんじゃない…なんて」

「それだぁ!!」

「わっ…」


冗談半分で提案したのだが、あまりにも大きな声が返ってきたので驚いて思わず声が漏れる。


「それだよ、蓮!!」

「……」


琴羽は両手の拳を握りしめる。

蓮は、もうどうにでもなれ、と呆れた様子で琴羽を見つめる。


「どっかいいお店ないかなっ!!」

「…ここ」


蓮が見ていた雑誌の記事を指差す。

…というのも、蓮が提案したのも雑誌を見たからなのだ。


「どこ-??」


琴羽も雑誌を覗き込む。

記事には地図もついていた。


「駅前じゃん」

「みたいだね。帰りにでも行ってみたら」

「どうせだったら休日がいいなぁ。おしゃれして、ついでに未花と買い物してくる」

「…ふ-ん」


女は大変だね、と呟くと雑誌を差し出す蓮。


「??」

「やるよ。見ておいたら??あんたギリギリになって慌てるタイプでしょ」


意地悪そうに笑う蓮を睨みつつも、有り難くそれを受け取る。


「ありがと」

「まぁ、頑張って」


琴羽に棒読みで答える蓮。

もはや未花のことで頭がいっぱいの琴羽を見て、蓮は呆れたようにため息をついたのだった。