俺様なアイツのしつけ方。

「パックの自動販売機欲しいね-…」


戻ってくるなり、買ったばかりのジュースを見つめて未花が呟く。

郷花学園には、自動販売機はあるのだがパックではないし、種類が豊富というわけではないので、こうして売店まで来なければならないのだ。

だから、未花の意見は最もだった。


「そだね。そしたらあいつも自分で買うようになるかも…」

「あいつ…??」


未花が首を傾げる。


「あんね…、あ-!!」

「??」

「私、急いでるんだった!!…じゃあ、またね」


挨拶もそこそこに、走っていく琴羽。


『早くね』


蓮に言われたことを思い出したのだ。

未花は呆然とそれを眺めていたが、放課後一緒に帰ろうと誘うのを忘れて後を追いかけた。


「琴…―」

「あれ、なにしてんの!?」


角を曲がった琴羽に声をかけようとした未花は、琴羽の驚いた声に、反射的に隠れてしまった。

誰かがいたらしい。

友達だろうか…。

朝の2人組かな、なんて考えていると、その相手の声が聞こえてきた。


「あんたが遅いから来てやったんだけど…」

「!!」


未花はすぐに分かった。

朝、キーホルダーを拾ってくれた小宮蓮。

校内で色んな噂を耳にするし、格好良かったから未花はほんの少しの時間でも、はっきりと思い出すことが出来た。


「心配してくれたの…??」

「…は??違うけど」

「え-!!」

「なんでこの俺があんたの心配しなきゃならないわけ」


ちょうど角になっているから、2人の音声しか聞こえないのだが、やけに親しげなのが分かる。


(なんで琴羽と小宮くんが…)


未花は頭が混乱してきた。

付き合っているのだろうか…。

でも琴羽からそんな話しは聞いていない。


「ほら、行くよ」

「うんっ」


2人の足音が遠ざかる。

未花はしばらくそこを動かなかった。