「暑い-…」


パタパタと手で仰ぎながら、琴羽は呟いた。

隣を歩く未花も唸る。


「地球温暖化まぢストップだし。未花達死んじゃうよぅ…」

「あっという間に夏だね」


つい先日入学式を終えたばかりだと思っていたのに、もう夏になってしまった。

「もうすぐ夏休みだね。焦る-…」


昇降口へと到着し、靴を下駄箱へ入れながら未花が呟いた。


「なにが??」


パタン、と扉を閉めながら問いかける琴羽に未花はため息をつく。


「そんなの決まってんじゃん」

「…??」


訳が分からず、頭の上に?を浮かべていると、未花が琴羽に人差し指を突きつけた。


「彼氏に決まってんでしょ!!」

「え、彼氏??」


きょとん、とする琴羽。


「夏休み彼氏もつくらず家にいるなんてありえないから!!」

「そ-なの…??」

「そ-だよっ!!」

「ゔ…」


ずいっ、と顔を近付けられて怯む。


「未花達彼氏いないんだよっ??」

「う、うん…」

「夏休みはさ、2人で街行って逆ナンでもしよっか♪」

「はぁ!?」

「だって未花頑張ろうと思ってたのに…琴羽話し聞いてくれなかったし」

「え…??」

「クラスマッチの前!!放課後話ししようと思ったのに、琴羽すっかり忘れてたし…上の空のこと多かったじゃん」

「あ」


固まる琴羽。

蓮の過去やらなんやらで頭がいっぱいだった。


「ごめん、未花…」

「いいよ、別に。また話し聞いてくれる??」

「もちろん!!」


気合いを入れて、返事をすると未花が笑った。

その時だった。


「琴羽、おはよっ!!」


廊下で話していた優と比奈が手を振っていた。


「あ、おはよ-!!」


振り替えしていると、未花が琴羽の背中をそっと押した。


「行きなよ」

「え、でも未花の話し…」

「また今度でいいからさっ!!未花も教室行くし」

「そっか。じゃあ、またね」


琴羽はそう言い残し、優達の元へ駆け寄って行く。

未花はその後ろ姿を、寂しそうに見送った。