リビングへ入っていくと、父が新聞を読んでいた。


「ただいま、お父さん」

「おぉ、お帰り。…こんばんわ」


蓮に気付いて微笑む。

蓮が頭を下げた。


「座って?」

「あ、うん…」


琴羽に勧められて、蓮がソファーに腰を下ろす。

琴羽も隣に座った。


「はい、どぉぞ♪」


母がコーヒーを運んできた。

それぞれの前に置いて、父の隣に座る。


「ありがとぉございます」


蓮がお礼を言って微笑んだ。


「小宮蓮くんだよ」


改めて父に紹介すると、父が頭を下げた。


「父の弘司(ヒロシ)です。こっちは、舞佳(マイカ)」


父に紹介されて、母も頭を下げる。


「いつも琴羽が世話になっているようで…」

「いえ…。こちらこそ」


蓮が緊張しているのが気配で分かる。

敬語を使っている蓮が、なんだかおかしく感じて琴羽はそっと笑った。


「今日は勉強教えてもらってたの。れ…小宮くんは、頭がいいから」

「あら、凄いわね。琴羽はすっごく手のかかる子だから大変だったでしょう」

「はぁ…」


母の問いに曖昧な返事をする蓮。

私には、馬鹿って言ったくせに!!


「小宮くんの両親は何をしているのかな?」


父がコーヒーを一口飲んでから問いかける。


「父は琴羽さんも通っている郷花学園の理事長を。母は、看護婦をしています」

「ほぅ…」


琴羽も蓮の母親の話しは初めて聞いた。


「大変そうだね。…恥ずかしいんだが、私は普通のサラリーマンなんだ。舞佳は専業主婦だしね…」

「いえ、いいと思います」


ふと、蓮の表情に影が差す。


「忙し過ぎないのは、子供にとっては1番だと思いますよ。出かける時や、帰ってきた時…親がいないのは寂しいですから」


静寂が包む。

ふと、母が口を開いた。


「蓮くん。うちで良かったらいつでもいらっしゃいね」

「え…」


蓮が驚いたように顔を上げた。