「〜♪」


ご機嫌で教室に戻った琴羽が扉を開けると、女子が駆け寄ってきた。


「へっ?!」

「ねぇねぇ夏野さんっ」

「小宮君ってやっぱり夏野さんの言うことは聞くんだね」

「………はい?」


一気に押し寄せられて、しかも意味の分からないことを言われる。

「さっきは夏野さんのお陰で助かったよ」

「まさか小宮君からアドバイスもらえると思わなかった〜っ」

「ありがとね、夏野さん!!」

「は、はぁ…」


みんな嬉しそうに囃し立てるなか、比奈が遠くから声をかけてきた。

ちなみにこの状況を助ける気はないらしい。


「ねぇ、琴羽〜。なんで小宮君、あんなに詳しかったの?」

「あ、あぁ…。お父さんのお付き合いで小さい頃から食事会に出てたからみたいだよ。ほら、お父さん理事長だし」

「なるほどね〜」


ふむふむ、と頷いている比奈。

その言葉に、また女子が反応した。


「小宮君の小さい頃見てみたい!!」

「スーツとか似合いそうだよね〜」

「執事喫茶にすればよかったかも」


言いたい放題で盛り上がる女子の中からやっと抜け出した琴羽は、優と比奈の元に非難した。


「お疲れさま〜」

「ちょっとアンタたち助けなさいよ」

「比奈怖いも〜ん」

「こいつ〜…」


ぐいっと比奈の両頬をつねる。


「いらいいらい!!(痛い痛い)」


その時、それまで看板などを作成していた男子が顔を上げた。


「なぁ、そこら辺の暇な女子!! 筆もらってきてくんね? 足りねぇんだよ」

「あ、私行ってくるよ」


ぱっと比奈の頬から手を放し、男子に歩み寄る。


「筆でいいの?」

「あと画用紙とか適当に使えそうなやつ!!」

「了解」


頷いて教室を後にする。

みんなで騒ぐのが大好きな琴羽は、ウキウキする気持ちに足が軽くなる。

辺りを見渡せば、みんなが作業に力を注いでいた。

次第に校内も華やかになるだろう。








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