自転車を転がし、俺よりもやや先を先導していた澁を見ていた。小柄で無口だというのは分かっていたが、よく見ると端整な顔つきをしている。今まで変わったやつだという偏見で顔なんか目もくれていなかった。清楚な体から細身の腕や足が伸びていた。
こんなに清艶だっただろうか。下手したらアズサや岸よりもきれいな肌の持ち主で、また、清雅な面があるかもしれない。いつも周りから孤立していて目立たなく、誰にも気付かれなくひっそりといたからこそ、こういう形が生まれたのかもしれない。
俺は澁についてをいろいろと研究しながら、これからどこに行くのか、どこに向かっているのかが気になってしょうがなかった。しかしどう聞けばいいのだろうか。一言しか話さない澁に、その限られた条件を突きつけられていた。その上、自転車置き場の前から、一言も話していない。
とりあえず、何かを話さなければ始まらないと思って、どうせなら直接言ってしまおうと思った。
「なあ。どこに向かっているんだ?」
「…家」
はたしてどこの誰の家なのか。予想は大体ついていた。
「誰のだ?」
「…私の」
澁は話すのに興味がないかのように目を合わせようとせず、前をひたすら見て歩き続けた。こいつについていっても、何もされないことは分かっていた。だってあまりに積極性のない澁だし、その上まだ確かな関係を持ったこともない。唯一の長い会話は今日あったが、それは質疑応答のようであったので、会話とはいえないだろう。
しかしやはり不安な気持ちはでてきて、聞いてみるだけ聞いてみようと思った。
「それで、何するんだ?」
「話…」
「どんなだ?」
「今日のこと…」
「そうか…」
「そう…」
これは会話なのだろうか。無駄な心の探りあいなのだろうか。それともわざわざ貴重な時間を放棄しているのか。
この空気を何とかしたいと、話題を詮索するが、ない。仲を深めようというわけではない。そんなことをしても無駄だ。こいつは誰にも心を開かないような気がしたからだ。
結局何も話さずに澁の家に着いた。マンションだった。かなり高級に見える。最上階はどこだと見上げると、てっぺんがよく見えない。
「ここ…」
こんなに清艶だっただろうか。下手したらアズサや岸よりもきれいな肌の持ち主で、また、清雅な面があるかもしれない。いつも周りから孤立していて目立たなく、誰にも気付かれなくひっそりといたからこそ、こういう形が生まれたのかもしれない。
俺は澁についてをいろいろと研究しながら、これからどこに行くのか、どこに向かっているのかが気になってしょうがなかった。しかしどう聞けばいいのだろうか。一言しか話さない澁に、その限られた条件を突きつけられていた。その上、自転車置き場の前から、一言も話していない。
とりあえず、何かを話さなければ始まらないと思って、どうせなら直接言ってしまおうと思った。
「なあ。どこに向かっているんだ?」
「…家」
はたしてどこの誰の家なのか。予想は大体ついていた。
「誰のだ?」
「…私の」
澁は話すのに興味がないかのように目を合わせようとせず、前をひたすら見て歩き続けた。こいつについていっても、何もされないことは分かっていた。だってあまりに積極性のない澁だし、その上まだ確かな関係を持ったこともない。唯一の長い会話は今日あったが、それは質疑応答のようであったので、会話とはいえないだろう。
しかしやはり不安な気持ちはでてきて、聞いてみるだけ聞いてみようと思った。
「それで、何するんだ?」
「話…」
「どんなだ?」
「今日のこと…」
「そうか…」
「そう…」
これは会話なのだろうか。無駄な心の探りあいなのだろうか。それともわざわざ貴重な時間を放棄しているのか。
この空気を何とかしたいと、話題を詮索するが、ない。仲を深めようというわけではない。そんなことをしても無駄だ。こいつは誰にも心を開かないような気がしたからだ。
結局何も話さずに澁の家に着いた。マンションだった。かなり高級に見える。最上階はどこだと見上げると、てっぺんがよく見えない。
「ここ…」



