シーソーゲーム

 試合後の集会で、決勝トーナメントに進出したチームの発表をした。朝と同じように並んでいた。アズサは無口で、並ぶ前も何も話さなかった。俺も話せなかった。互いに話せない同士で五十歩百歩だと思うが、切り出すタイミングが分からない。

 集会が終わり、俺はいち早く人混みから離れた。アズサと小海と氷野から逃げたいと思った。今日は一人で帰ろうかと考えていた。

 誰よりも教室に戻り、誰もいない教室でいち早く学生服に着替えた。そして教室を出ようとしたところ、運悪く、ミズキとばったり会ってしまった。

「おい、探したんだぜ」

「今日は用事がある。忘れてたんだ…じゃあな」

 ミズキをかわし、その横をするっと抜けた。

 これから人が階段を上がってくる。この階段ではしばらく降りることはできないだろう。そしていつかはアズサや小海も上がってくるだろう。それを避けるため、この高校生活一年で培って見つけた、抜け道を行くことにした。ミズキはどんな顔をしているだろうと思いながら、俺の抜け道を歩いていた。何年ぶりだろう。この抜け道。しばらく使ってなかったことに気がついた。単に非常階段を下りるだけなのだが。

 昇降口には誰もいなかった。がらんとしている。やけに高い天井には虚しさがたまっていた。

「リョウ」

 突然のことに驚いた。誰もいないと思っていたところで、声をかけられたのだった。

「来て」

 声の聞こえるほうを振り向くと、そこには澁がいた。

 横を向いたと思うと、下駄箱に隠れ、そのまま見えなくなってしまった。俺は後を追うと、もう靴を履き替えて外に向かって歩き出していた。俺もその後を追った。

 澁の横に並び、何を切り出せばいいのか分からないまま、何も話さずに歩き続けた。駐輪場の横を通る時、今日は自転車で来ていたことを思い出した。どうしようかと思っていると、澁はぼそっと言った。

「自転車…」

「とってきていいのか?」

 何を聞いているのか俺。それにしても、こいつは単語しか話せないのか。

 澁はうなずき、俺は自転車をとってきた。