シーソーゲーム

 俺はどこにいたかは分からない。だが、今ここにいるのは明らかだ。

「…よし。続きはまた今度だ。リョウ。試合に遅れんなよ」

 氷野は同じように準備体操をして、俺より先に歩いて行った。

 俺は何をして、何を考え、何の目的で氷野の話を堪能していたのだろうか。それを信じようとしていたわけではない。信じようと努力したわけではない。それはすべて、勝手に入って記憶される。小海の話したことと対比して、次々と繰り出された言葉の数々に圧倒されて、ついにはパズルのピースがすべてはまってしまったような、そんな満足感と今まで感じたことのない不思議な興奮を味わった。

 今、意識が朦朧としている。

 俺は水道の蛇口をひねり、お猪口一杯分ほど飲んでから、亀が追い越してしまうほどの遅い歩みで、その上、奇怪で機械的な歩き方で歩いていた。誰にもこの姿を見られないでよかったと思う。

 遠くでまだ、掛け声のこだまは響いていた。


 自白した。自分の持つ能力を。俺が予想したものとはかすった程度だった。氷野が持つその能力は、霊能力者的な特殊能力。いや特異な超能力とでも言えるだろうか。まだ俺は疑いの目を光らせているが、これは演技かもしれない。

 試合の途中もそれだけで、前の試合と同様、集中できなかった。小海と氷野の同時の監視。これはあまりに無理なことで、もしかしたら意味のないことになるかもしれないが、それはそれでいい。無駄な労働だが、一つ確かめられることになる。

 しかし小海と氷野はいつもと変わらない顔をして、俺と目があっても俺が目を伏せるだけで、やつらは微笑んでいた。話しかけられても、俺が話しにくいという雰囲気を作って、逆に不審な目で見られた。本来が俺がやることをやられているのは俺から見ても滑稽だ。

 そんな時、話す相手といったらミズキぐらいしかいない。いつもならアズサも含むのだが、今はどうにも話せないような空気を作ってしまった。

 そして試合は終わり、気付いてみたらリーグで優勝。明日のトーナメント戦に進出するという展開となった。