シーソーゲーム

「まあな…俺たち、野球を通じて通じ合っているからな」

「なんだそりゃ」

 氷野は笑い、つられて俺も笑った。優しい空気が流れた。この場所で今日一番いい空気だ。

 氷野の一言前まで言っていたことなんてもう忘れていたが、そんなことも間もないことだった。

「なあ、リョウ。俺たちはな、お前に伝えにきた求人なんだ」

「は?いきなりなんだよ」

 もうやってられない。まさか氷野までもが小海と同様、変なことを語るのか。もうそれは勘弁して欲しい。なぜ俺がこいつらの宗教的な考えを得ねばならないのだ。聴くだけでも無駄な時間だと思った。小海の言葉は考えさせられたが、結果的に意味のないものとなったからだ。

「いや、俺は別に…」

「俺たち、実は今、こうするために何年も前から予定されて集められた求められた人、求人なんだ。求められた人である以上、誰が求めたのかは、神だ。つまり、神の求人と言ったほうが分かりやすいだろうと思うが、実はお前の求人だとも言える」

「何で俺が…」

 俺がこいつらを集めた?まさか。そんなことがあるはずがない。一度も望んだことがない。集まれと号令をかけたら簡単に集まるようなものではないだろう。しかも俺にはそんな能力がない。それぐらい自分で分かっている。

「そんなはずがない。俺は望んでないんだからな」

「いや、お前じゃない。我々が崇める神だ。我々はお前に伝えるために生まれた。神のご意志に沿ってのことだ。我々は伝えたら消える。それ以上生きる必要がないからな」

 頭の中で、氷野の言葉がパズルのようにつながった。氷野の言った、小海の足りない言葉。それを言わなかったからここにいる。もしすべてを話したら、もしかすると小海は消えていた。こういうことだろうか。

 そういえば、突然氷野の話し方がいつもと違うような気がする。片言というより、真面目というより、一昔も前の人のような、歴代の人が氷野にのり移ったようだった。そしてそれは武人のような口ぶりだった。

「我、ここにあるのも神のご意志…消えるのもこの我が心中。我が本望…我が使命、今果たさんと…す…」